「1 本の木が教えてくれること」
23期 酒田 真澄美
かっこいい響きだなという認識でしかなかった樹木医という資格が、自分が目指す資格に変わったきっかけは、同じ職場に樹木医の上司がいたことです。何気なく水やりの間隔についてお聞きしたとき、土壌の三相組成から、水やりの奥深さと難しさを丁寧に教えて頂きました。その方から、それまで森林の構成要素のひとつという捉え方をしていた樹木について学ぶ楽しさを教えて頂き、私も学んだことが身についているか、さらに学ぶにはどうすべきかを知るために、樹木医受験を決めました。
試験勉強は、「樹木医の手引き」のページを開くことから始めましたが、時間がないなかで全ての項目を細かく勉強することは困難だと感じ、まずは身につけるべき知識をチェックしました。その後は、絵でわかりやすく解説してある関連図書を読み、試験直前は過去問題集を解いて、家族に学んだことを説明するようにしました。理解できていないことは、誰かに説明することはできないし、質問されたことは次の学びにつながります。(付き合ってくれた家族に感謝しています。)試験の論述問題は、正しい内容を書くというより、論理的であること・制限文字数の8割以上埋めること・丁寧な字で書くことを心がけました。
私は林業関係の仕事に携わっていますが、“業”である以上は、全体の収穫を優先させる必要があり、面積あたりの材積や林分の平均的な樹高や直径でスギを語ることが多いです。しかし、樹木医の勉強をしてからは、「このスギの雌花はもう咲いているな」と1本のスギを観察してからスギ林全体を見るようになり、今までとは違った楽しさを感じています。樹木医学を学ぶこと、1本の木が教えてくれることを読み取る努力をすることは、仕事の上でも普段の生活の中でも、新しい世界を広げてくれる種になりました。
樹木医として診断や治療をする機会はまだありませんが、いつか、新しい世界を教えてくれた樹木医さんと樹木医という資格に恩返しができるよう、これからもより一層研鑚に励みたいと思います。