「現場で学びながら」
30期 長谷川 広征
栃木県にある植物園、あしかがフラワーパークに勤めて20 年以上になります。藤が多く咲く園で、その傍らに黄色い花を咲かせるキングサリが植栽されています。そのキングサリが、枯死するという事象に悩まされたのが、私が樹木医を目指すきっかけとなりました。何故何故何故と悩み続け、自分なりに多くの事を試しました。しかし、なかなか結果が出ず行き詰まってしまい、研究機関や大学、そして先輩樹木医の方々に相談をさせて頂きました。その知見の多さ、現場での視点など多くの事を、知識の浅い自分に丁寧に、そして親身になって教えて下さいました。初めて聞く言葉も多く、分からない事ばかり。恥ずかしく感じるとともに、失礼な事だとも感じました。また、私とともにキングサリを管理している相棒も樹木医を取得し、その取り組む姿勢に感銘を受けました。皆様から頂いた多くの教えを無駄にしたくない、キングサリをなんとかしたいと思う気持ちが更に強くなり、樹木医を目指す決意へと変わりました。その後も、土壌・植物ホルモン・生理・防御反応・DNA 解析・微生物分析・気象など様々な視点で植物を観察し、その結果を見てまた次への取り組みへと進め、勉強というより、現場での打開策を生み出すために学びを深めたという感じです。参考にしたものとしては、樹木医の手引き・樹木医学・土壌関係全般・伝染環に関する図書・腐朽菌関係・病害虫・菌根菌・気象・白書に加え、最近の動向を各機関のHP や冊子などを参考に学びました。
初めは、ひとつの樹木がきっかけではありましたが、他の樹木もそれぞれ抱えている問題があり、それらに向き合っていくことにより幅も広がりました。
どんな樹木も、それぞれ生育する環境が複雑に関係しているのだと気づかされます。私自身、これからも自然への感謝を忘れず、研鑽を深め、真摯に樹木に向き合ってまいります。今回お話しさせていただいたことが、これからの繋がりや、きっかけとなりましたら幸いです。