「無知を楽しむ」
28期 三浦 貫才
私は秋田県秋田市で造園業をしております。父が始めた造園屋の跡継ぎという表現が一番分かりやすいかと思います。父は樹木医6期で、自分が取れないなれないでは跡継ぎという面目が立たないので、受験をしたというのが一番の理由です。
とはいえ、樹木医になる過程が苦痛だったかと言うと、全くそんなことはありません。樹木医には様々な分野の知識が求められます。分子や細胞単位のミクロな話から森・地球規模のマクロな話まで、話題は尽きません。新しい情報や考えもしなかった視点・切り口・考え方がどんどん入って来ます。とても面白いですね。
偉人ソクラテスは、無知の知という概念を世に遺しました。掲載スペースに限りがあるため、やや論理が飛躍しますが、自分に知らないことがあると分かるのは非常に楽しいことです。樹木における自分の無知を楽しめる人であれば、遠からず樹木医になれると思います。無論、知らなかったことを調べて身に付けることが前提ですが。
私の方から勉強法はこれ、という提示は出来かねますが、強いて言うのであれば、人と喋ることが最も効率よく勉強になると考えております。樹木の専門家として活動して居られる立場の方であれば特に、同業者やお客さんなどとお話する機会があるかと思います。話の中で知らなかった事を曖昧なままにしておかず、調べて情報を共有することで、知識と信頼が得られるはずです。そういった機会を多く持つため、樹木医にはコミュニケーション能力も重要です。
最後に、世の中では…地方では特に、まだまだ樹木医及び樹木医学が十分に認知されていません。折角取った資格なのに、名声が伴わないと残念です。力を振るう場が無いと勿体ないですよね。樹木医の目で見て、こうしたら良いのになと思う場所や樹木は沢山あります。例えば、都市計画や緑地管理の設計の段階でも我々の知識は生かせますし、生かしていかなければなりません。全国どこでも樹木医の意見や存在意義が尊重されるよう、共に協力し合える仲間をお待ちしております。