「上司の言葉」
25期 前田 敬
公園樹木の樹勢調査の結果を報告した際、「樹木医の調査結果なら信頼してもらえるんだけどね。」と当時の上司に言われた事があります。その時は「樹木医はそんなに偉いのか!」と多少ムッとしましたが、これが私の樹木医を目指すきっかけとなりました。
私は建設コンサルタントで、樹木調査や緑化計画等に携わっています。樹木医は近い存在ではなく、社内では取得している人もいません。ネットを活用し、まずは過去問を入手、マニュアルと関連書籍を購入し、通勤時間を勉強にあてました。生態や生育環境はまだ良かったものの、生理や病害虫等はほぼ初めての内容でした。過去問には解説が載っていたので、不得意分野を中心にとにかく繰り返し読むことにしました。論述は、過去問に回答を準備して対策しましたが、幸運にも植栽に関する問題が多く、「マイカンギア」を忘れたり、カシノキクイムシと書いてしまったり思えば恥ずかしい回答もしましたが、何とか通過できました。研修はご存じのとおりとても充実した2週間でした。
樹木医は、私が取得した資格の中でも、一番取得後の生活が変わった資格かもしれません。仕事の内容は大きくは変わっていないものの、樹木医会等への関わり、色々詳しい同期との繋がり、困ったときに相談できる樹木医のネットワークがとても心強く、樹木の専門家としての一歩を踏み出せたような気がしています。
さて、樹木医を取得した直後、サクラ並木の樹木診断を担当する機会に恵まれました。しかし新米樹木医が一人でやれるわけもありません。先輩の先生方にご協力をお願いしての仕事となりましたが、そこでは、初めて「生」の診断作業に触れることができました。慣れないカルテの記入や機器の測定結果に悩まされながらも、報告書としてまとめ、無事納品し良い評価を頂くことができました。診断業務を通して、樹木医は知識と経験の豊富な専門家であり、全く至らない私は、もっと多くの知識を身に着けなくてはいけないと、改めて感じ今後の精進を決意しました。あの時の上司の言葉は正しかったと、今では思います。