「緑」の力で個人と社会を豊にしたい
24期 佐々木 正顕
私の勤務先は、庭や街路の緑化を行っており「造園緑化事業」としては大手の造園業者でもあります。年間の植栽本数は低木類も含め100万本前後、東京都内の街路樹総数が94万本であることを考えるとその多さがご理解頂けると思います。現在その本社で、生物多様性等環境チームのリーダーをしています。
寺院や庭園の名木はその雄大さと風格で深い感銘を与えますが、住宅の庭の小さなシンボルツリーでもそこを訪れる野鳥にふれて住んでいる子どもたちが「いのち」を身近に感じます。また変化する四季の移ろいは日々の暮らしを豊かにし家族の思い出を紡いでくれます。
しかし、「緑」は費用の面でも工期の面でも、これまで建物の附属物として扱われがちでした。こういう流れに一石を投じる契機になればと、社内の樹木医数名と共に樹木医の育成を企画しました。エクステリア担当者に呼び掛け、ベテラン樹木医を講師に皆で社内勉強会を開催したのです。生態系に配慮したオリジナルの植栽プロジェクト「5本の樹」計画や木材調達等を主管してきた関係で、法学部出身ではあっても植物への関心が高かった主催者の私自身も受講することにしました。過去問のポイントをマーカーの色や記号を工夫し、常に持ち運べるように裁断、分冊化した「手引き」に書き込み、新調した老眼鏡で空き時間を見つけては読み込みました。
社内ではここ数年続けて10名程が合格し、樹木医は35名になりました。樹木のことを真剣に考え、その魅力を社内やお客様に語れる仲間が増えてきたことで、自社でも新しい流れが生まれつつあります。
仕事柄、講演をしたり、国・自治体の会議に出たりする機会も少なくありませんし、今後「グリーンインフラ」の重要性は間違いなく高まると思います。植物を本当に理解し、樹を愛する人間がそういう場に樹木医視点で関与する機会が増えれば、社会を豊かにする役にも立てるはずだと信じています。